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ジョゼフ・コーネルの七つの箱

アメリカ生まれのジョゼフ・コーネル(1903-1972)は、「箱のアーティスト」として知られています。1931年にエルンストやダリなどのシュルレアリスム芸術に感化され、自らコラージュなどを制作したあと、彼が生涯を通じて作り続けたのは、両手で抱えられるほどの大きさの手作りの箱にお気に入りの品々をしまい込んだ作品でした。それらはコーネル自身にとっての宝箱であると同時に、彼独自の世界観を披露するショーケースであったといえます。

専門店で見つけた蝶や虫の標本が図鑑から切り抜かれた仲間たちと戯れ、その様子を二羽のオウムが隣でじっと眺める《無題(オウムと蝶の住まい)》は、博物館の陳列棚のように整然として見えます。しかし見方を変えれば金網で仕切られ、捕虫網が壁に掛かったこの小屋に棲息するオウムと蝶は、異国に憧れを抱きながらも、母と弟の面倒をみるため、住まいのあるニューヨークから一生離れられなかったコーネルの姿とも重ねることもできるのです。


ジョゼフ・コーネル 《無題(オウムと蝶の住まい)》 1948年頃 手製の木箱、版画、蝶の標本、金網、ガラス、捕虫網など 50.0 x 34.6 x 16.4cm
© The Joseph and Robert Cornell Memorial Foundation/VAGA, New York & SPDA, Tokyo, 2007

やや小ぶりな箱全体に数種の楽譜が貼り込まれた《無題(ピアノ)》は、コーネルの音楽好きがうかがえる作品です。マンハッタンの古本屋で買い求めたであろうこれらの楽譜は、19世紀ヨーロッパのロマンティック・オペラの歌曲を家庭で弾けるようにピアノ用に編曲したもので、音符を目で追えばその優雅な音色を頭の中で響かせることができるでしょう。そればかりか、この作品からは、耳にも音楽が届くようになっているのです。青いガラスで覆われた箱内部の下段に、太鼓をたたく天使の像と並んでオルゴールが入れられており、箱の裏側のネジを巻くと、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ ハ長調(K.545)」が流れるように仕掛けられています。


ジョゼフ・コーネル 《無題(ピアノ)》 1947-1948年頃 手製の木箱、楽譜、小箱、青ガラス、オルゴール、天使の塑像など 28.3 x 21.3 x 12.1cm
© The Joseph and Robert Cornell Memorial Foundation/VAGA, New York & SPDA, Tokyo, 2007

コーネルが箱に入れたものには、虫の標本や珍しい楽譜のようなこだわりのコレクターズ・アイテムのほかに、近所の雑貨屋で売られているコルク球やコーディアル・グラスといった日用品もありました。箱の中のこれらは本来の姿にくわえ、さまざまなものの象徴として登場します。たとえば、《鳥たちの天空航法》の二本の金属棒の上を転がる白いコルク球は、玩具のようであり、運行する天体であり、無垢な魂をもった渡り鳥が飛んでいくさまであり・・・と、多種多様な意味合いを含んでいます。あるいは、青い空を海と見れば、箱の底に置かれた素焼きのパイプや貝殻、折れ曲がった釘のついた木の切れ端が、遠い昔に海に沈んだ難破船の名残であるとも思えてきます。こうした時空を超えた広がりは、そこが箱という小宇宙だからこそ感じることができるのでしょう。

こうした時空を超えた広がりは、そこが箱という小宇宙だからこそ感じることができるのでしょう。


ジョゼフ・コーネル 《鳥たちの天空航法》 1961年頃 手製の木箱、コルク球、コーディアル・グラス、巻貝、素焼きのパイプなど 30.2 x 45.8 x 9.6cm
© The Joseph and Robert Cornell Memorial Foundation/VAGA, New York & SPDA, Tokyo, 2007

関連収蔵作品

  • 《無題(ラ・ベラ[パルミジャニーノ])》 1950-1956年頃
  • 《鳩小屋:アメリカーナ》 1950年代初め
  • 《無題(星ホテル)》 1956年頃
  • 《海ホテル(砂の泉)》 1958-1959年頃

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