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ジョゼフ・コーネル
《 無題 ( ラ・ベラ [ パルミジャニーノ ] 》 1950 - 56年頃
手製の木箱、複製画、釘、木片など
©The Joseph and Robert Cornell Memorial Foundation /
VAGA, NY & SPDA, Tokyo, 2010
このページの図版はすべて川村記念美術館所蔵
©ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2009
貝殻や星図、リキュール・グラスや古い絵画の複製など、小さな品々が詰まった手作りの木の箱。コーネルが地下室のアトリエでこつこつと作り続けたそれらは、美術作品でありながら、彼自身の幸せな子供時代を封じ込めた宝物箱、叶わぬ夢や憧れのための飾り棚といえるものでした。そしてまた、両手で抱えられるほどの大きさの箱は、のぞき見る人の空想しだいで、どこまでも拡がっていく無限の宇宙にも姿を変えます。誰もが心の奥に大切にしまいこんでいる世界。その豊潤さや甘美さを、コーネルの箱は思い出させてくれるのです。
そんなコーネル芸術を深く敬愛する高橋睦郎(むつお)は、1993年に「この世あるいは箱の人」と題した詩をつくり、この稀代のアーティストを讃えました。そして本展では、当館が所蔵する7つの箱作品と9つの平面コラージュひとつひとつに捧げた詩16篇を新たに発表します。コーネルの創作と同じくひそやかに綴られた言葉は、その「小さく広大な世界」を清新な光で照らし出すにちがいありません。
美術家と詩人、20世紀のアメリカと現代の日本――異なる時空に生きながら、それぞれ独自の小宇宙を創造したふたりのコラボレーションを通じ、これまでにないコーネル・ワールドを体験していただけることでしょう。
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ジョゼフ・コーネル |
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ジョゼフ・コーネル |
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1903年、ニューヨーク郊外に生まれたジョゼフ・コーネルは、裕福な家庭で育ちますが、父の急死により生活は一転。家計を支えるために学校を辞め、17歳で布地の卸売会社のセールスマンとして働き始めます。そして、マンハッタンのあちこちを歩き回る合間に、いつしか古本屋やレコード店をのぞき、劇場やギャラリーに足を運ぶのをささやかな楽しみとするようになりました。とりわけ19世紀ヨーロッパのバレエやオペラ、美術、音楽に心酔した彼は、それらにまつわるレコードや書籍を買い求めるようになります。蒐集はコーネルにとって、厳しい現実から逃避し、失われた幸福な過去を取り戻すための補償行為だったのかもしれません。
こうして、大都会ニューヨークの文化を存分に吸収したコーネルは、1931年、27歳の時にマックス・エルンストの作品を見て心を動かされ、自らもコラージュやピル・ボックスなどを使った小さなオブジェを作り始めます。その5年後には、手作りの木箱にお気に入りの品々を詰め込んだ作品を制作し、続く1940〜50年代には、〈シャボン玉セット〉〈ロマンティック・バレエ〉〈鳥小屋〉〈ホテル〉などと呼ばれる箱のシリーズを次々に手がけました。そのなかには、憧れた往年のプリマドンナや歌姫だけではなく、グレタ・ガルボ、オードリー・ヘップバーン、マリリン・モンローといった当世の人気女優たちに捧げる箱もあったことが知られています。その後コラージュに専心した60年代を経て、1972年に69歳でこの世を去るまで、数多くの魅力的な作品を残しました。コーネル自身は「アーティスト」と呼ばれることを嫌ったそうですが、その作品は、今も世界中の美術館で多くの人に愛されています。
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高橋睦郎(むつお)は、コーネルが30代半ば、箱作品を作り始めて間もない1937年に福岡で生まれました。少年時代から文才を発揮して、福岡学芸大学(現福岡教育大学)在学中に初詩集を出版。上京後の1964年、コピーライターの職に就くかたわら、詩集『薔薇の木・にせの恋人たち』を刊行し、三島由紀夫をはじめ文学界から注目を浴びます。それから現在に至るまで、詩のみならず、俳句、短歌、また新作能、狂言、浄瑠璃など日本語詩歌のあらゆる可能性を追求、蜷川幸雄演出の舞台「王女メディア」、「オイディプス王」、創作オペラ「遠い帆—支倉常長」の台本を手がけ、多彩な創作活動を展開しています。2000年にはその功績が高く評価され、紫綬褒章を受章しました。
高橋がコーネルの作品に初めて出会ったのは、1978年。奇しくも本展に出品される箱作品7点がそろって出品された「Seven Boxes by Joseph Cornell」展(雅陶堂ギャラリー)でのことでした。そもそもは、1971年に雑誌の仕事でニューヨークを訪れたとき、グッゲンハイム美術館でコーネル回顧展のカタログを見つけたのが、この作家に惹かれたきっかけでした。当時を振り返って高橋は、「『なつかしい人』と感じた」と語っています。
実をいえば、コーネル作品と詩のコラボレーションは、今回が初めてではありません。 1978年の展覧会では瀧口修造が詩を捧げ、1992年にはアメリカの詩人チャールズ・シミックが『コーネルの箱』という本を上梓しています。また、先にふれた高橋睦郎の詩「この世あるいは箱の人」は、1993年に川村記念美術館で「ジョゼフ・コーネル」展を開催したときに生まれたものでした。コーネル自身もエミリー・ディキンソンの信奉者だったほどで、コーネル芸術と詩との間には長らく不思議な因縁があったのです。
コーネルが作品に用いた素材は、ひとつひとつを見れば、とるに足らないささやかな日常品であり、人の目に留まるようなものではありません。しかしそれらが箱の中で組み合わされれば、まるで魔法をかけられたようにロマンティックで魅惑的な世界が現れ出ます。詩もそれと似て、飾らない言葉と言葉の組み合わせが、思いがけず豊かなイメージを創り上げるのです。高橋の詩を手がかりにすれば、ありきたりの作品解説からは知りえないコーネル芸術の魅力を、必ずや深く心に刻んでいただけることでしょう。

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ジョゼフ・コーネル |
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さらに本展では、詩とアートのコラボレーションを、より豊かな感性で味わっていただくため、美術館の展示室を星空に見立てた、特別な空間を演出します。暗闇に浮かびあがるコーネルの作品。そのひとつひとつが、無数の星に囲まれた小宇宙であることを体感してみてください。
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会場模型 ( 展示デザイン:半澤 潤、写真撮影:渡邉 修 )
作品リスト(PDF:71KB)
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ジョゼフ・コーネル
《 あわれな胸よ、ふるさとを……(ヘルダーリン) 》
1960年代初め
印刷物の切り抜き、紙、絵具、メゾナイト(硬質繊維板)
4/17(土)14:00-15:00
高橋睦郎がコーネルに捧げる新作詩を朗読し、コーネル作品の魅力について語ります。
終了後、書籍サイン会も行います。
4/10(土)、6/27(日)14:00-15:00
展覧会の担当学芸員が会場をご案内して作品の解説をします。
4/10、4/17、6/27を除く毎日14:00-15:00
コレクション展示と本展の解説をいたします。
会場混雑時にはコレクションのみのガイドとなる場合があります。
高橋睦郎氏による詩の朗読や展覧会案内、作品解説などをお楽しみください。
コレクション展示の解説も収録しています。
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ジョゼフ・コーネル
《 無題 (オウムと蝶の住まい) 》 1948年頃
手製の木箱、版画、蝶の標本、金網、ガラス、捕虫網など
当館所蔵のコーネル作品16点の図版に加え、高橋睦郎の詩「この世あるいは箱の人」と新作詩16篇、コーネル小論を収録した書籍を当館ミュージアムショップにて販売します。
『箱宇宙を讃えて』
発行=川村記念美術館
日英バイリンガル、128ページ、フランス綴じ、テキスト活版印刷
税込予価 2,500円
★フランス綴じの袋状ページをご自身でカットしていただけるよう、
オリジナルデザインのペーパーナイフも販売します。