寄り添うサイン
鑑賞中はそっと佇み、 知りたいときはそこにいる
館内外に配された、順路や設備を示す「サイン」は、人と作品とのよい出会いのための環境づくりの一つとして設計されています。鑑賞中は目につかず、次のアクションを起こしたときには自然と目に留まる存在感を醸すよう工夫されています。
きちんとしていて、おおらかな「ピクトグラム」
現在使われているサインは、2008年の美術館リニューアル時に、グラフィックデザイナーの色部義昭氏が作成したものです。そのサイン構想は「どんな人がどんな風に案内してくれるのか」と、この美術館を擬人化することから始まったといいます。当館スタッフとのディスカッションを重ねる中で固まってきたイメージは、ハキハキと簡潔に案内してくれる骨太な人。そこに静かで穏やかな周囲の環境を加味し、丁寧にかたどったのが「きちんとしていて、おおらかなピクトグラム」です。簡潔で張りのあるラインで整え、この美術館らしい健やかで親しみのあるキャラクターを描き出しています。
方向だけでなく、どんな通路かが見える『矢印』
館内・館外の各所に配置されている矢印。その形状はひとつひとつ異なります。というのも矢印が示しているのが、進路方向だけではないからです。長短は歩く距離を、造形は通路の形状を、段々は階段の上り下りをデザイン。細やかな空間の情報まで直感的に把握できるようにしています。
その場にふさわしい声となる書体
案内板をはじめ、作品のキャプションや印刷物などの書体もピクトグラムと同じコンセプトのもとに統一されています。ピクトが「人」であるならば、書体は「声」だと考え、場所や内容に応じて適切な音量・声色となる柔軟性を持たせました。また、幅広い年齢層の来館者を想定し、読みやすさの検証に多くの時間を掛けています。