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エルズワース・ケリーの油彩、版画作品を公開しています
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2019年7月26日
当館では、アメリカの画家エルズワース・ケリー(1923-2015)の油彩《ブラック・カーヴ》(1994年)および複数の版画作品をコレクションに加え、6月22日(土)より公開しております。
油彩、カンヴァス 218 × 183 cm DIC川村記念美術館
©️ Ellsworth Kelly Foundation Image: Ron Amstutz, courtesy Ellsworth Kelly Studio
概要
エルズワース・ケリー(1923-2015、ニューヨーク出身)は、きわめてシャープなフォルムと鮮やかな単色の色面をフラットに仕上げて独自の表現を確立し、戦後のアメリカ美術界の中でも特異な地位を占める画家です。
しばしばシェイプト・カンヴァスを用いる明快で抽象的な画面から「ハード・エッジ」の代表作家として知られています。しかしながら、植物や影、建築物の一部、はたまたアイスクリームコーンの包装紙といった現実世界に存在する事物の写生が作品の発想源となることが多い点で、アメリカ抽象表現主義やポスト・ペインタリー・アブストラクションといった純粋な抽象美術の動向とは一線を画します。
ケリーの個性の基盤となった経験として、20代後半のエコール・デ・ボザールへの留学が挙げられます。この時期、ケリーはパリでマティスやブランクーシ、カルダー、アルプをはじめとする多くの大芸術家と交流しました。さらに、各地のキリスト教建築やルーヴルなどで展示されている歴史的文化財といった、アメリカでは見る機会の少ない造形に積極的に触れたこともケリーの土台となりました。
帰国後は絵画を基本としながら彫刻、レリーフ、版画も並行して制作し、建築空間を利用した大規模なインスタレーションを手掛けるに至りました。
出品作品について
今回は展示室に合わせて《ブラック・カーヴ》(1994年)および版画10点前後を選出して展示します。
《ブラック・カーヴ》はケリーの代表的なモチーフである扇状の「カーヴ」を白地に黒で描いた2メートルを超える大型の油彩作品です。ケリーはシリーズを展開する際、まず初めに黒で描いてフォルムを決定し、その形に様々な色彩をあてはめていくという制作手順をとります。それを鑑みると、赤や青といった他の色のカーヴが描かれた同様の構図の作品がある中、黒で描かれた本作はシリーズの中心となる作品だといえます。
植物の輪郭をなぞるように描かれた〈植物〉シリーズ(1965-66年)は、ケリーの作品のもとが写生であることを思い出させてくれます。さらに、ロマネスク時代の建築物が現存し、ケリーも実際に訪れたことのある地名がついた〈ロマネスク〉シリーズ(1973-76年)、ケリーに特徴的な鮮やかな色が堪能できる〈パープル レッド グレー オレンジ〉シリーズ(1988年)といった版画作品を組み合わせることで、ケリーの多彩な画業の一端をご紹介します。
リトグラフ、紙 130 × 117 cm DIC川村記念美術館
©️ Ellsworth Kelly Foundation
リトグラフ、紙 114 × 104 cm DIC川村記念美術館
©️ Ellsworth Kelly Foundation
リトグラフ、紙 108 × 117 cm DIC川村記念美術館
©️ Ellsworth Kelly Foundation
リトグラフ、紙 118 × 116 cm DIC川村記念美術館
©️ Ellsworth Kelly Foundation