モノクロで描かれた人物画が見るものに強い印象を与える五木田智央。眼には見えない現実を写し取ろうとするスウェーデン生まれの写真家アンダース・エドストローム。柔らかな色彩と繊細な形態が溶け合う絵画を描く角田純。静謐で深みのある色面に光の本質を求めるフランシス真悟。水面に映る多彩な情景をダイナミックに描く野沢二郎。遠い記憶の心象風景を絵画空間に呼び起こす赤塚祐二。そして、重厚な油絵の質感の中に色彩の形を探求する吉川民仁。
上記、現代の7人の作家たちの最新作とともに、モネ、ピカソ、ブラック、ヴォルス、モランディ、サム・フランシス、アド・ラインハート、サイ・トゥオンブリーなど、20世紀美術に多大な影響を与えた芸術家の作品を同時に展観いたします。
文化や時代は様々に異なりますが、「対象の本質を如何に顕すのか」という近代芸術の重要なテーマが、個々の作品に脈々と継承されていることを、実際の作品を通して感じて頂ければ幸いです。
東京都生まれ、東京都在住。
2000年、リトルモアより作品集『ランジェリー・レスリング』を出版。カルト的な人気を集める五木田の初期作品は、おもに紙に即興的に描かれたドローイングであり、展覧会の場で発表されるだけでなく、むしろイラストレーションとして、また美術系雑誌を媒体として数多く発表されている。近年に描かれたキャンバスにグワッシュを用いた白黒のシュールな人物像は、いち早くニューヨークで注目され、現在、美術の世界にとどまらず各方面に活動の場を広げている。
個展:「Funland」(2010年 Aliceday ブリュッセル)、「HEAVEN」(2009年 HONOR FRASER ロサンジェルス)、タカ・イシイ・ギャラリー(2009年)、「Wildest Dreams 」(2010年 ATMギャラリー ニューヨーク)、 「ランジェリー・レスリング」(2000年 渋谷パルコギャラリー/名古屋パルコギャラリー/福岡アルティアム)他。
グループ展:「Black and White」 (2011年 NANZUKA UNDERGROUND 東京)、「VOCA展 2009 現代美術の展望-新しい平面の作家たち」(2009年 上野の森美術館 東京)他。
出版物:作品集『ランジェリー・レスリング』(2000年 リトルモア)他。
スウェーデン、フロソ生まれ、東京都在住。
写真家、映像作家。1990年にパリに移住。デザイナー、マルタン・マルジェラと仕事を始め、以後、長きにわたってメゾン・マルタン・マルジェラとのコラボレーションを続ける。フランスの雑誌『Purple』を始めとする国内外の雑誌での作品発表や、ファッションブランドのキャンペーン撮影を手がける。2001年より数本にわたる映画をC.W.ウィンターと共に製作。デレク・ベイリーをフューチャーした[One Plus One 2]ほか、ナレーションスタイルの[The Anchorage]では2009年ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞。2004年より東京に居住。
個展:「Baptême」(2009年 ギャラリー・トラックス 山梨)他。
グループ展:「Not in Fashion」(2010年 Museum für Moderne Kuns フランクフルト)、「第2回恵比寿映像祭」(2010年 東京都写真美術館)、「Elysian Fields」(2000年 ポンピドゥー・センター パリ)他。
フィルム作品:[The Anchorage](2009年)、[One Plus One 2](2001年)。
出版物:『safari』(2010年 Nieves)、『Waiting some birds and bus a woman / Spidernets places a crew』(2004年 SteidlMACK)他。
愛知県生まれ、東京都在住。
多摩美術大学卒業後、1980年代から広告・出版業界でアートディレクターとして才能を発揮し、グラフィック・デザイナーとしても高い評価を得る。ライフワークとして描いてきた絵画作品を2000年頃から本格的に発表し注目を集める。アクリルによる絵画作品の他、水彩やコラージュ、シルクスクリーンなど、さまざまな素材を使いながら、音楽的感性が溢れる豊かな色彩と描線を描き出す。
個展:「sounding through」(2010年 FOIL GALLERY 東京)、「yama-biko」(2010年 ギャラリー・トラックス 山梨)「如意樹」(2010年 FOIL GALLERY 東京)、「TRANSMISSION」(1998年 スターネット 栃木)他。
出版物:作品集『Cave』(2009年 FOIL)、『MEXICO ICONS』(小野一郎との共著 2000年 アスペクト)。
カリフォルニア州サンタモニカ生まれ、ニューヨーク在住。
画家。ピッツァー大学で美術学士を取得したのち、日本で本格的な作家活動に入った。深い群青色のモノトーンの透明な世界を、最小の構成要素によって絵画として成立させた連作により画家としてのスタートを切った。油彩画と平行して、大気圏に顕れる光の現象を色彩に置き換えるための実験として、大判のロール紙に水彩で光学的現象を描くドローイングを行っている。
個展:「Veils: a dialogue with the abyss 」(2011年 ギャルリー・パリ 神奈川)、「Bound for Eternity」(2009年 モンタルボ・アートセンター カルフォルニア)、「Blue’s Silence: ashes in darkness」(2008年 ヒノギャラリー 東京)、「Hoop Art」(2010年 カサ・デル・マー・ホテル カルフォルニア)他。
グループ展:「Art as Expression of Being」(2011年 Checkpoint Ilgen ベルリン)「Ties over Time」(2010年 駐日米国大使公邸 東京)、「Elements of Nature」(2010年 Contemporary Art Center New Orleans ニューオリンズ)、他。
茨城県生まれ、茨城県在住。
筑波大学大学院芸術研究科修了後、高校の美術教師を長く勤め、現在は明星大学で教鞭をとっている。油絵具という素材を正面から受け止めて退くことのない精神的な強度が、そのまま作品の魅力に繋がっている。特製ゴムベラ(スキー ジ)を駆使して、体全体を使ったストロークには、自然現象と同化していく繊細な眼差しが込められているようである。
個展:「水面の陰翳」(2011年 コバヤシ画廊 東京)、「After the Rain」 (2009年 ギャラリーしえる 茨城)、「三つの絵画」(2007年 六角堂/岡倉天心遺跡 茨城)他。
グループ展:「現代茨城作家美術展」(2007年 茨城県近代美術館)、「自然のことば、美術のかたち」(2001年 日立市郷土博物館 茨城)、「バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレ」(1997年 Honourable Award受賞)、「VOCA展1997」(1997年 上野の森美術館 東京)、「ディアロゴス1996・現代性の条件」(1996年 水戸芸術館 茨城)他。
鹿児島県生まれ、千葉県在住。
東京藝術大学大学院修士課程修了。在学中には油彩画と版画を専攻した。卒業後、グラフィックデザイナーやイラストレーターの仕事を試みたが、新たな決意を持って画家を志した。初期の《canary》シリーズにおいて、影のような形象が大画面に現された作品が高く評価される。最新の《another mountain》シリーズにおいて赤塚は、これまでより高い次元の絵画構造の理論的展開を試みている。
個展:コバヤシ画廊(東京)、鎌倉画廊(鎌倉)、ガレリアフィナルテ(名古屋)、ギャラリエアンドウ(東京)、村山画廊(東京)、他。 グループ展:「山川の間で─アートプログラム青梅」(2011年 青梅市立美術館 東京)、「絵画の力-80年代以降の日本の絵画」(2003年 東京都現代美術館 東京)、「かたちを求めて−11人の日本作家」(2001年 釜山市美術館 プサン)「視ることのアレゴリー:絵画・彫刻の現在」(1995年 セゾン美術館 東京)、「現代美術の視点 形象のはざまに」(1992年 東京国立近代美術館 東京)。出版物:『ことり』(西元直子の詩による詩画集)他。
千葉県生まれ、千葉県在住。
武蔵野美術大学大学院修士課程在籍中に、同大学教授の藤枝晃雄氏の推薦を受け、鎌倉画廊で初めての個展を開催して以降、同画廊を中心に作家活動を行っている。絵画修復の経験を有する吉川の作品は、材料学的な知識が活かされている側面もあり、画布上で展開する絶妙な色彩混合と、表面の絵具層が持つ触覚的な要素が、鑑賞者の眼を捉えて離さない。職人的な気質と繊細な感性が融合した作家といえる。
個展:「吉川民仁展」(2011年 古美術長野 東京)、「net」(2011年 日本橋高島屋画廊X 東京)、「kind of green」(2009年 鎌倉画廊 神奈川)他。
グループ展:「China Fifth Art Industry Forum」(2004年 National Museum of China 北京)、「Chiba Art Now ‘01 絵画の領域」(2001年 佐倉市立美術館 千葉)、「ART BASEL」(1994年'95'96'97'98 スイス)他。出版物:『日本一短い詩の本』(2003年 伊藤英二編 吉川民仁画 岩崎書店)。