静寂へのアプローチ

美術館の敷地へ足を踏み入れ、林間道をゆくと、木立の先に穏やかな水面が広がります。水鳥の遊ぶ池を眺めながら歩みを進めるうちに、気持ちは緩やかに日常を離れていくことでしょう。館内エントランスホールに入ると天井装飾の柔らかな灯りの下でマイヨールの《ヴィーナス》が出迎え、ステンドグラスの窓から漏れる光が作品との出会いを予感させます。

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目と心の休憩窓

館内にある11の展示室は5つの渡り廊下で結ばれ、それぞれの廊下に外光を採り入れる窓があります。透明なガラス越しに見える木々の反射光を「グリーンライト」、すりガラス越しに見える白い光を「シルバーライト」と名づけ、前者は目に、後者は心に、ひとときの休息を与えるものとして設置されました。新たな気持ちで次の展示室へ入っていくための空間として、これらの廊下と窓は大切な役割を担っています。

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ロスコの世界へ導く廊下

マーク・ロスコの<シーグラム壁画>を恒久展示するロスコ・ルームは、その手前に位置する展示室から長さ25m、幅は人ひとりが歩けるほどの細い廊下で隔てられています。間接照明が照らす薄暗い通路を進むごとに、他の展示室から独立したロスコの求心的な世界へと近づきます。突き当りの窓からは木々の根や草むらが見え、内面に沈潜してゆく感覚をもたらすでしょう。
 

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帰着の窓

すべての展示を観た後に、鑑賞に集中してきた目の緊張をほぐし、心が日常へ戻ってゆくための穏やかな空間です。椎の木が見える大窓の眺めが気分を内から外へと向かわせます。

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