開館30周年記念展
ふたつのまどか

―コレクション×5人の作家たち

2020年3月20日(金・祝) - 7月26日(日)

時間:
9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日:
月曜(ただし5月4日は開館)、5月7日(木)
主催:
DIC株式会社
後援:
千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会
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入館料

  • 一般 1,300円
  • 学生・65歳以上 1,100円
  • 小中学生・高校生 600円

団体(20名以上):

  • 一般 1,100円
  • 学生・65歳以上 900円
  • 小中学生・高校生 500円

障がい者手帳をお持ちの方
(付き添い1名まで同料金):

  • 一般 1,000円
  • 学生・65歳以上 800円
  • 小中学生・高校生 400円

※各種割引適用には学生証や保険証などの身分証明書が必要です

※本チケットでコレクション展示もご覧いただけます

※5月5日(火・祝)はこどもの日につき高校生以下入館無料です

概要

本展はDIC川村記念美術館の開館30周年を記念し、コレクションと現代作家のコラボレーションの機会として企画されました。

当館の建物には、エントランスホールの天井照明やステンドグラスをはじめ、「重なる二つの円」のデザインモチーフがちりばめられています。そこには、初代館長・川村勝巳と建築家・海老原一郎の友情の絆、そして鑑賞者と作品が出会う場という意味が込められているのです。

本展はこのモチーフにちなんだタイトルどおり、現在第一線で活躍する5名の作家と当館のコレクション作品との出会いの場となります。
現代美術作家の目によってコレクションが読み解かれ、その手によって紡ぎだされる新たなインスタレーションが、ひとつの空間のなかで展開されます。
時代をこえたつながり、響きあいをどうぞお楽しみください。

 

出品作家

さわひらき × サイ・トゥオンブリー
杉戸洋 × ラリー・ベル
野口里佳 × ジョアン・ミロ
福田尚代 × ジョゼフ・コーネル
渡辺信子 × エルズワース・ケリー


見どころ

さわひらき (1977- ) 
× サイ・トゥオンブリー (1928-2011)

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さわひらき《Souvenir IV》2012年
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サイ・トゥオンブリー《無題》1968年 DIC川村記念美術館
© Cy Twombly Foundation

グレーの画面に、左から右へ幾筋もの線が漂うサイ・トゥオンブリーの抽象絵画。
乾ききらない絵具の表面を、白いクレヨンの先が探るように潜り、そして浮きあがってはさまようさまは、素材の接触という瞬間瞬間の官能的な戯れを細やかに紡ぎだしています。

一方、さわひらきの映像作品では、居間やキッチンといった居住空間を舞台に、玩具の飛行機が飛び交い、食器や文具が動き回り、ときに影絵の駱駝が行進し、寓話的イメージを日常的な空間に織り込むことで、ありふれた風景を幻想的な情景へと映しかえています。

トゥオンブリーとさわ、まったく異なる表現方法をとりながら、彼らの作品にはいくつもの共通点を見いだすことができます。
素っ気なさと親しみやすさ、不器用さと軽やかさ、単純さと繊細さ、無邪気さと丁寧さ。そして思いがけず、こうした要素からかけ離れたところの、重層的な時間の深さと広がり。

今回の展示では、絵画と彫刻、初公開を含む映像作品の約5点を介し、二作家の対話が作りだす「時間」のあわいに想いをめぐらせます。


杉戸洋 (1970- ) 
× ラリー・ベル (1939- )

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杉戸洋《Untitled》2019年 作家蔵
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ラリー・ベル《無題》1969年 DIC川村記念美術館
© 2019 Larry Bell / ARS, New York / JASPAR, Tokyo G2098

杉戸洋は自身の絵画作品と、それが存在する空間の関係性を探求している作家です。本展で杉戸は、ミニマリズムの彫刻家ラリー・ベルの作品を選び、複数の新作絵画と共にインスタレーションを手掛けます。

当館所蔵の《無題》は、ベルの初期キューブ作品の代表的なもので、ガラスの金属蒸着加工により虹色の効果を放ちます。置かれる場の光と空間を反映し、空間そのものを認識する装置として機能しうる点に、杉戸は着目しました。

展示にあたり、杉戸はまずこのベルの作品と呼応する、繊細な輝きを放つ絵画を描きました。片側にピンクのスタイロフォームを付したこの作品は、異素材の組み合わせが新鮮です。
さらに、正方形の展示空間を対角線に分断するように高さ3m、幅7mを超える壁状の作品を設計しました。正面から白く見えるこの壁は四層構造で、各面異なるホログラム調の壁紙が貼られています。
明暗を分けるように立つこの壁とホログラムの輝き、そしてベルの作品により自然と光の存在に意識が向くことでしょう。


野口里佳 (1971- )
× ジョアン・ミロ (1893-1983)

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野口里佳《クマンバチ #1》2019年
Commissioned by Reborn-Art Festival 2019
© Noguchi Rika, Courtesy of Taka Ishii Gallery
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ジョアン・ミロ《コンポジション》1924年
DIC川村記念美術館
© Successió Miró / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2019 G2098

野口里佳の写真作品は、天空から海底まで見渡すような大きな視点から撮影されるダイナミズムと、ちいさなものの繊細な息吹をとらえるまなざしの両方を備えています。
野口のレンズを通すと、透明に澄んだ光が満ちるなかで、生き物たちは軽やかな奇跡を引き起こし、日常の風景のなかに宇宙への通路が開かれるようです。

ジョアン・ミロが晩年に住んだスペイン、カタルーニャ地方のマヨルカ島を訪ねた野口は、明るい光線のなかでその土地の持つ特別な力を感じとり、ミロの作品の根底にあるものに触れたように感じたといいます。それはミロの作品世界で浮遊する形態たちからも感じられる、まるで宇宙人のようなマジカルな力に通じるものでした。

当館所蔵のミロ作《コンポジション》には、ピラミッドのような三角錐が描かれ、塔の先端からは謎めいた黄色い粒子がもれ出しています。ちいさな葉や鳥が宙を舞う様子は、この不思議なエネルギーに反応しているかのようです。
野口は「飛ぶもの」と「宇宙と交信する木」をキーワードに新作に取り組んでいます。
 


福田尚代 (1967- )
× ジョゼフ・コーネル (1903-1972)

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福田尚代《ラ・シャット・エマイヨールへの手紙》
2009-2019年 作家蔵
©Naoyo Fukuda, courtesy Yukiko Koide Presents
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ジョゼフ・コーネル《ラ・シャット・エマイヨール》
1964年頃 DIC川村記念美術館
© The Joseph and Robert Cornell Memorial Foundation / VAGA at ARS, NY / JASPAR, Tokyo 2019 G2098

福田尚代は、本や文房具に精緻で反復的な手作業をほどこした彫刻やオブジェ、コラージュを手がける作家です。ジョゼフ・コーネルもまた、古書店や雑貨店で求めた書物や小さな品々を用いて、コラージュや箱の作品を生み出しました。

コーネルが多くの場合、お気に入りの絵画の複製図版や雑誌の切り抜き、あらかじめ素材にすべく造作した小物を作品全体の構成要素として用いるのに対し、福田はしばしば子ども時代から大切にしてきた思い出深い事物自体に、削る、折る、切り抜く、刺繍するといった内的な動機から生じる行為によって手を加え、それらを別の何かに転生させたものが作品として現れてきます。
当館所蔵のコーネルのコラージュと重層的に響き合う福田の新作《ラ・シャット・エマイヨールへの手紙》では、古い葉書から剥がされた切手が文庫本の頁に貼られていますが、切手はコーネルも好んで蒐集した素材でした。

また、福田は美術と並行して、「回文」の制作に取り組んできました。世界が「言葉の粒子」でできていると考え、言葉と事物がその存在と非在の狭間で溶け合う次元で創作を続ける作家にとって、美術と回文が根底において分ちがたく結びつき、同じ地平から生まれてくる表現であることを、本展で感じ取っていただければ幸いです。


渡辺信子 (1948- )
× エルズワース・ケリー (1923-2015)

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渡辺信子
《White and Red》2017年 Arario Gallery
《Dark olive green and White -Corner piece》2017年 作家蔵
photo credit: Arario Gallery, Courtesy of Arario Gallery, Seoul

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エルズワース・ケリー《ブラック・カーヴ》1994年
DIC川村記念美術館 © Ellsworth Kelly Foundation

渡辺信子の作品は、木枠に既成の布を張りこんで作られます。木枠と布は絵画の材料ですが、渡辺はそこに描く代わりに、布の色彩、質感を選んで組み合わせ、木枠の形状によってさまざまな表情を引き出します。
大胆で繊細なフォルムは、平面的な要素と立体的な要素をあわせ持ち、壁面にも床面にも、部屋の角を使ったコーナーにも設置されます。まさに絵画でもなく彫刻とも言い難い、軽やかで明快な、渡辺独自の作品世界です。

彼女の最も敬愛する作家に、ハード・エッジと呼ばれるフラットな色面抽象を描くアメリカの画家、エルズワース・ケリーが挙げられます。
早くから金属板製立体作品を制作し続け、絵画と立体の境界を軽々と超えてきたケリーの手がける、色面を抜き出したようなシェイプト・カンヴァス作品も、布と木枠でできたレリーフのようでもあります。そう考える時、渡辺信子作品との共通要素が浮かび上がります。

近年、ますます造形的に研ぎ澄まされてきた布作品に加え、渡辺は金属彫刻の制作にも着手しています。初めての機会となる二人のコラボレーションは、興味深い成果をもたらすことでしょう。


作家略歴

さわひらき

1977年 石川県生まれ
2000年 イースト・ロンドン大学美術学部ファインアート科卒業
2002年 若手作家の登竜門であるEast International Award受賞
2003年 ロンドン大学スレート校美術学部彫刻科修士課程修了
2004年 個展「Going Places Sitting Down」
              (ヘイワード・ギャラリー、イギリス)
2005年 個展「Black Box」
              (ハーシュホーン博物館、アメリカ)
2006年 個展「Six Good Reasons to Stay at Home」
              (ビクトリア国立美術館、オーストラリア)
2010年 個展「Carrousel」
              (ブザンソン美術考古博物館、フランス)
2014年 個展「Under the Box, Beyond the Bounds」
              (東京オペラシティ アートギャラリー/ビクトリア美術館、カナダ)
2019年 個展「Memoria Paralela」
              (ナバーラ大学美術館、スペイン)
現在、ロンドン在住

[パブリックコレクション]
愛知県美術館、イスラエル美術館、金沢21世紀美術館、国立国際美術館、高松市美術館、東京都写真美術館、ハーシュホーン博物館、フォートワース近代美術館、ボストン美術館、森美術館 など


杉戸洋

1970年 愛知県名古屋市生まれ
1992年 愛知県立芸術大学美術学部日本画科卒業
1996年 絵画制作のため渡米
1998年 「VOCA」(上野の森美術館)奨励賞受賞
2006年 個展「FOCUS」
              (フォートワース近代美術館、アメリカ)
2015年 個展「天上の下地 prime and foundation」
              (宮城県美術館)
2017年 個展「とんぼ と のりしろ」(東京都美術館)、
                 前川國男設計の建築空間を利用したインスタレーションを展開
2018年 平成29年度(第68回)芸術選奨、文部科学大臣賞受賞
現在、名古屋と東京を拠点に活動

[パブリックコレクション]
愛知県美術館、ヴァンジ彫刻庭園美術館、国立国際美術館、サンフランシスコ近代美術館、高橋コレクション、高松市美術館、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、豊田市美術館 など


野口里佳

1971年 埼玉県生まれ
1993年 日本大学芸術学部写真学科卒業
1997年 ニューヨークを拠点に活動(2001年まで)
2001年 個展「予感」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)
2004年 個展「飛ぶ夢を見た」(原美術館)
              個展「彼等」(アイコンギャラリー、イギリス)
              ベルリンを拠点に活動(2016年まで)
2008年 「第55回 カーネギー・インターナショナル」
              (アメリカ)参加
2009年 二人展「光 松本陽子 / 野口里佳」(国立新美術館)
2011年 個展「光は未来に届く」
              (IZU PHOTO MUSEUM)
              「第4回 横浜トリエンナーレ」参加
2017年 個展「海底」(タカイシイギャラリー)
2018年 「第21回 シドニービエンナーレ」
              (オーストラリア)参加
現在、沖縄県在住

[パブリックコレクション]
ウォーカー・アート・センター、金沢21世紀美術館、国立国際美術館、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、高松市美術館、東京国立近代美術館、東京都写真美術館、原美術館、ポンピドゥー・センター など


福田尚代

1967年 埼玉県浦和市(現・さいたま市)生まれ
1992年 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了
1994年 アメリカ、ワシントン州に居住(2000年まで)
2010年 「アーティスト・ファイル2010―現代の作家たち」
              (国立新美術館)参加
2013年 個展「慈雨 百合 粒子」(小出由紀子事務所)
2014年 「MOTアニュアル2014 フラグメント」
              (東京都現代美術館)参加
2016年 個展「言葉の在り処、その存在」(うらわ美術館)
              美術と回文の作品集『ひかり埃のきみ 美術と回文』を平凡社より刊行
現在、埼玉県在住

[パブリックコレクション]
うらわ美術館、東京都現代美術館 など


渡辺信子

1948年 東京生まれ
1970年 この頃から作品発表を始める
1971年 相愛女子大学音楽学部器楽学科ピアノ科卒業
1998年 二人展「Nobuko Watanabe Elke Sander」
              (ケルン日本文化会館)
1999年 個展「境界の向こう側」
              (ギャラリー・キキ・マイヤーハーン、ドイツ)、
              以後同画廊で継続的に個展
2001年 個展「布のかたち」(西宮市大谷記念美術館)
2002年 「アーティスト・レジデンス展」
              (国際芸術センター青森)参加
2003年 「いととぬの」(群馬県立近代美術館)参加
2017年 個展「Beyond “Beyond Color and Space”」
              (Gallery Nomart)
               個展「VOICE OF ASIA」
              (アラリオ・ギャラリー、韓国)
現在、箕面市とデュッセルドルフを拠点に制作。ピアニストとしても活動している

[パブリックコレクション]
芦屋市立美術博物館、大阪府20世紀美術コレクション、北九州市美術館、ケルン日本文化会館、西宮市大谷記念美術館、兵庫県立美術館 など


会期中のイベント

出品作家によるトークイベント
※中止となりました

 3月21日(土) さわひらき(映像作家)
4月11日(土)  野口里佳(写真家)
5月23日(土)  福田尚代(美術家)
6月13日(土)  杉戸洋(美術家)
7月4日(土)  渡辺信子(美術家)
 

学芸員によるギャラリートーク
※中止となりました

3月28日(土)、4月25日(土)、5月30日(土)、6月27日(土)、7月11日(土)
14:00-15:00(14:00エントランスホール集合)
予約不要|入館料のみ
 

ガイドスタッフによる定時ツアー

上記イベント開催日を除く毎日
※当面の間休止いたします
14:00-15:00(14:00エントランスホール集合)
予約不要|入館料のみ
※毎月第三土曜日は参加型ギャラリートーク「mite!」実施


カタログ情報

ふたつのまどか―コレクション×5人の作家たち

執筆:さわひらき、杉戸洋、野口里佳、福田尚代
   渡辺信子、DIC川村記念美術館
編集:DIC川村記念美術館、脇山妙子(左右社)
デザイン:須山悠里
発行:DIC川村記念美術館

B5変型並製/176ページ
一般価格:2,530円(税込)

ミュージアムショップ特別価格:2,300円(税込)
本展会期中、当館ミュージアムショップ店頭および通販では特別価格にて販売いたします。会期終了後は一般価格になります。


インタビュー動画

さわひらき

3月21日(土)のトークイベント中止に伴い、本展での展示についてお話を伺いました。

 

 

4名の出品作家に、本展での展示や作品についての思いを伺いました。会場風景と共にご紹介しています。

杉戸洋

野口里佳

福田尚代

渡辺信子